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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第11章 瑞月の決意
このタイミングで、五月女さんから? 半分の悪い予感と、半分のそうでないものが、俺の中でグルグルと混ざり合っていた。
「誰?」
瑞月の声から、さっきまでの艶やかさが、既に消え去っている。それが次は大きくマイナス方向に振れることを覚悟した上で、俺は答えた。
「五月女さん――電話できないかって」
「あっそ」
思った通り不機嫌に答えた瑞月は、そのまま席を立ち店を出ようとする。
急ぎ会計を済ませると、瑞月を追って俺も店を後にした。
「待てよ! はぐれたら、どうする気だ? スマホは、置いてきてるんだぞ」
瑞月の手首を掴むが、その手はあっさりと振り解かれてしまう。
「だって、話の邪魔したら悪いし」
ツンとしたままスタスタと早足の瑞月を、追いかけながら。
「とにかく、側から離れないでくれよ」
「でも、私がいたら、ゆっくり話せないでしょ!」
「別にお前が思ってるようなことを、話すわけじゃないって」
そう言ったのを聞くと、瑞月は立ち止まり、俺の顔をキッと睨みつけた。
「私が思うことって、なに? どう思ってると、言うの?」
「それは……」
言い淀んでいると、瑞月はさっきと違う種類の涙で、その瞳を潤ませた。
「みっともないね……私」
「瑞月」
「こんな顔見せたくないから、他の三人のことだって、聞かないって決めたはず、なのに……」
五月女さんが、俺と連絡と取りたいという理由は気になっていた。
だけど、今の瑞月をこのままにはしておけない。瑞月を不安にさせているのは、俺自身なのだから。