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第11章 瑞月の決意

　思わず言葉を詰まらせた俺に代わり、五月女さんは言った。

「誰だって、自分の人生をそんな風に思いたくはないもの」

「す、すいません。そんなつもりでは」

「いいの」

　――きゅう。

　その時、俺の身体を、五月女さんが一際強く抱きしめた。

「お父様との間になにがあったのか、それを涼一さんに話すつもりはありません。それは、今後も一切。だけど、私の中にある複雑な感情が、あなたを傷つけたこと。それは、謝らせてほしい――だから、ごめんなさい」

「五月女さん……」

「今、涼一さんが苦しんでいること、その全ては私のせいです。だから、もう苦しまないで」

「それじゃ、駄目です」

「え？」

「大人のせいにばかりしていたら、いつまで経っても成長できない。だから半分――半分だけ、この苦しみを肩代わりしてもらえませんか？」

　すると五月女さんは身体を離し、俺の顔をじっと見つめた。

「わかったわ。ねえ、涼一さん」

「なに？」

「私たち、同志にならない？」

「同志？」

　その言葉の定義を、五月女さんの意図を、深く考えたわけではないけど。

「うん、わかった」

　俺はそう答え、そして五月女さんは――

「そう。じゃあ、これはその証ね」

　そう言った後で、俺と唇を重ねたのだった。