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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第2章 コーヒーはブラックで
そんな俺の様子を見かねたのだろう。
「電話して『タクシーで帰ってこい』って言ってやれば?」
「ああ、そっか」
高坂さんに言われ、瑞月に電話をしかけるが、すぐに思い直した。
「どうしたの?」
「いや、またウザがられそうで……」
「あーあ、情けないお兄さんだねー」
「うるさいなあ」
実際、電話できなかったのは瑞月の機嫌を気にしてのこと、ばかりではない。むしろ一番の原因は、今こうして話している高坂文水にある。
瑞月たちが帰らない別荘で彼女と二人きり。俺の方はこの状況に、そろそろ限界を感じはじめていた。
もちろんこちらから、変な気を起こすことはあり得ないとしても……。
「じゃあ、俺……しばらく書斎にいるから」
「書斎?」
「あ、地下のこと。寝泊りもしてるから、書斎っていうのも変だけどね」
「じゃあ、管理人さんの城だね。小説もそこで書いてるんでしょう?」
その問いには曖昧に頷き。
「まあ、とにかく。なにか用があったら呼んで」
そう告げてそそくさと地下に逃げ込もうとしたのだけど、すぐに呼び止められてしまう。
「ねえ、よかったら見せてよ」
「なにを?」
「管理人さんの書斎だけど――ダメ?」
そんな風に甘えた声で聞かれた、その数分後のことである。
「うわー、なにこの本の数。まるで図書館じゃん」
居並ぶ書架を前にして、彼女は屈託なく自らの想いを口にする。俺は結局、高坂文水を地下の書斎に招いていた。
だが、それは前言を撤回してスケベ心を起こしたからでは、(断じて)ない。そうしたことには、もちろん理由があった。
もし高坂文水が昨夜、この地下に忍び込んでいる張本人なら、それは彼女の反応に表れるはず――と、そう思ったのだが。