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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第11章 瑞月の決意
「ほら、私たちも春には三年生だし、クラスの子たちと話していても、恋愛とかそういう話題が多くなって……その、考えちゃうじゃん。つき合うとかってなったら、実際どうなのかな、とか」
「そんなの、少し考えればわかるだろ?」
「どういうこと?」
「学校からこのマンションまで、ドアからドアへ運ばれて行く毎日。塾に通いたいとえば、最高学歴を有した家庭教師が家に招かれる。ピアノを習いたいといえば、高級ピアノを買い与えられ名のあるピアニストが講師として招聘される、なんて。至れり尽くせりって人は言うだろうけど、裏を返せば自由なんてない。それが、俺たち兄妹だ」
「やっぱり、不自由だって思う?」
「当たり前だろ。だから、俺は――」
「なに?」
「いや、今はいい」
この時は、まだピンと来ていなかった。間違いなく恵まれているという自覚だってあるから。それにお父さんはとても優しかたし、私に固執してると感じるようになったのは、もう少し先のことだった。
「瑞月、本当に誰かを好きになったわけじゃないのか?」
改めてそう聞く涼一に、私は少し意地悪っぽく言った。
「お兄ちゃん、気になるの?」
「違うって! 一応、確認というか……」
「じゃあ、もし私が誰かとつき合うって言ったら、お兄ちゃんどうする?」
「だから、今のままじゃ無理だろ」
「そういうことじゃなくて、もしこの先、私に彼氏ができたら?」
「チャラい奴だったら、嫌かなって」
「それだけ?」
「他に、なにを言わせたいんだよ?」
「ふふふ、別にないよ。でも、少しは焦ってくれそうで、ちょっと安心かな」
「なんだよ、それ……」
結局、この夜の相談は、有耶無耶のままに終わった。