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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第2章 コーヒーはブラックで


 そして現実にこうなっていることを踏まえれば、昨夜の相手が高坂文水であった可能性を高く引き上げざるを得ない。だからこそ俺は、彼女の真意を探る必要を感じていた。

「俺は臆病なもんで、できればトラブルは避けたいと考えてる」

 俺の首元に絡まっていた両腕が、すっと力を抜いた。俺はようやく上体を少しだけ離し、ベッドで仰向けになったままの、彼女と顔を合わせる。

「私とこうなることは、管理人さんにとってトラブル? つまりは、迷惑だと思ってる」

「いや、そうじゃなくて……」

「ではなくて、なに?」

 真剣な眼差しを向けられ、やや怯んだ。泳ぎそうになる視線を、耐えてぐっと見つめ返す。

 高坂文水に対しては、おそらく好意に近い気持ちが芽生えはじめていた。だけど、それは今の彼女に対してではないように思う。明らかに、行動が突飛だと感じている。

 これが本当に、彼女自身の意志なのか……それとも?

「突然すぎるから、正直、戸惑っているんだ」

「大体、そんなもんじゃない? 男と女なんて」

「違うよ。少なくとも俺は違う」

「へえ、意外と堅いんだ。それとも奥手なの?」

「どっちでもいいけど……」

「ウフフ、見栄は張らないんだね。そういうところも、悪くはない」

「だから、からかうなって」

「ううん、真剣だよ」

 彼女は小さく首を左右に振り、また自然と両手を首元に回した。

「それじゃあ、段階を踏もう」

「段階?」

「まずは、キスして」

「……」

 そのまま、かなり長い時間、俺は彼女と見つめ合った。意志の強そうな瞳を、今は若干、潤ませている。「キスして」と発したままの唇が、とても艶めかしく艶やかだ。

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