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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第2章 コーヒーはブラックで
魅力の塊のような存在が、俺のすぐ眼下にいる。このまま唇を重ねてしまえば、もう止まれない気がした。否、それは間違いない。激しく迷いながらも見つめていると、先に揺らいだのは彼女の方だった。
ふっと、その眼差しがシーツの上に逸れる。
「やっぱり、嫌だよね」
「え?」
「私みたいな、汚れた女となんか……」
「なんで、そんな――」
言いかけた俺の身体をかわすように、彼女は上体を起こした。その横顔を窺いながら、なんとなくベッドの上で肩を並べて腰掛ける。
「汚れた、とか……。どうして、そんな言い方を……?」
なんとなく投げかけていた疑問に、彼女は少し照れたように。
「だってさぁ――」
それでいて、自嘲気味な笑みを浮かべた。
「――昨日も話したじゃない。エッチなお店で働いてたって……。もっと赤裸々に言えば、つまり風俗嬢をしてたわけ。だから正解。管理人さんみたいに恵まれた環境にある人が、わざわざ手を出すような相手じゃないよ」
あくまで自虐的に笑い飛ばすような口調でありながらも、さっきまでとは異なり俺の方を見ようとはしなかった。その様子を、どこか悲しく感じる。
「学費を稼ぐため――それも、自分のことはついでだって、そう言ったね」
「うん、そう。家庭の事情ってやつ。本来、弟の学費のつもりだったの」
「だったら、なにも恥じる必要なんてないと思う」
「ううん、恥じる。私はそのことを一生恥じるよ」
頑なに頭を振り、高坂さんは只ならぬ様子で話を続けた。
「弟はさ……私の稼いだお金を、使ってくれなかったの」
「え?」
「アハハ、それが風俗で稼いだお金だってバレちゃってね。そんな金で大学に行きたくないって、弟はさっさと就職しちゃったんだ」
「でも、それだって……別に、高坂さんが悪いわけじゃ……」
彼女は俯いたまま、また首を振って髪を揺らす。