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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第11章 瑞月の決意
「言葉の通りだ。よって、これ以上、茶番につき合い時間を失うつもりもない。この先、この二人がなにを言うつもりか知らんが、そんなものは戯れ言だ。世の中には貧しいながらも努力をして、這い蹲るように生きている人々がいる。私も若い頃は苦労の連続だった。それに比べ、私の庇護下で育った彼らは、そんな人々が羨むような恵まれた環境で過ごしてきた。そんな二人がこの上、無いものをねだろうとしている。どうか良識のある皆さんは、冷静な目で見てほしい――では、私はこの辺で」
朗々と語り上げ、席を立つ岸本。すると――
「逃げるのか、親父!」
去り行く背中に言葉を発したのは、その息子の涼一だった。
「なに?」
「……まだ話は終わってません。座ってください。お願いです」
一転、頭を下げる涼一に対して――
「あと十分だけだ」
岸本はそう言って、渋々と席に戻った。
「それじゃあ、涼一くん、後はまかせるよ」
丸田はそう言い、一歩引いて俯瞰する構えとなった。
「わかりました」
涼一は丸田に答え、そして父である岸本に向き直った。
「父さんが言ったように、贅沢な暮らしをさせてもらってきました。今は大学にも行かず、父さんの所有する別荘で作家修行をさせてもらっていて――こんなことだって、普通なら許されることじゃない。そんなことにも、ようやく気づけました」