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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第11章 瑞月の決意
それまで父親の方に批判的だったコメント欄が――
【とんだドラ息子じゃねえか】
【親ガチャ活用しすぎ】
【俺も作家志望だけに、こんな奴に出し抜かれたらと思うとたまらんわ】
【コネとかも使いそう】
と、涼一に対する批判が一気に増え始めた。
それを受けて、岸本は言う。
「それでも、お前が気の済むまでチャレンジして、一端の作家になれたのなら、それはお前の力だ。そのために利用するものは利用すればいい」
「僕はずっと、岸本英次の息子として見られてきました」
「それが、紛れもない事実だからな」
「そうです。だからこそ、早くそうでない自分にならなければならない。そんな風に、ずっと焦ってきました」
「なってみせろ。そのための協力は惜しまない」
「いいえ、それじゃ駄目なんです。僕は父さんの庇護下では、ろくな人間にはなれなかった。それは自分のせいだけど、このままじゃ変われないと思うから」
「結局、なにが言いたいんだ?」
「今までのことは感謝します。でも、これから先は、父さん――あなたから離れて生きてみます。瑞月と一緒に」
静寂、そして少し間を置いた後で、それを破ったのは、笑い声だった。
「ハッハッハッハッハ!」
岸本英次は一頻り笑った後で、この様に言う。
「なにを言い出すのかと思えば――フフフ。お前も二十歳を越えた大人だ。親の庇護下を離れ独立するなど、世間では当たり前の話だ。こんな場所で仰々しく宣言などせずに、勝手にすればいい」
それから、また表情を厳しく変え。
「だが瑞月は、まだ学生だ。そして、見ての通り可憐で美しい。これは親バカと言われようとも、構わん。純然たる事実だからな。それ故、妙な誘惑にも晒される。くだらん男たちも寄ってくる。守ってやらなければならないんだ」
「そうして守って、父さんは瑞月をどうするつもりですか?」
「なに?」
「見えないガラスをどこまで広げたって、ガラスの中は窮屈で息苦しいんですよ」
「だが、傷つくこともない。傷ついてから、それを後悔しても遅いんだ」