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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第15章 エピローグ④ パートナー
「どうぞ」
コーヒーを煎れてきてくれた五月女さんが、そのまま俺の隣に腰を下ろした。
それを高坂さんが、不満そうに見つめる。
「なんで、五月女さんが一緒に座るんです?」
すると、五月女さんは澄ました顔で、こう返した。
「編集者のお仕事がどんなものか、後学のためにと思いまして」
「必要ないんじゃないですか。担当は私なんだし。五月女さんは、ご自分の仕事に集中すればいいと思います」
「そうですね。経理や税務関連をはじめとする諸々の事務作業。先生のスケジュール管理と取材や講演オファーへの対応。加えて最近は、執筆に必要な資料の要約と取り纏め。それから――」
「ああ、もう! あなたが有能なことは認めてますから」
「ありがとうございます。有能な人間がパートナーである方が、先生のためですもの。ねえ、新米の編集さん」
高坂さんはギギギ、と歯噛みした後で、今度は悪戯っぽく笑う。
「相変わらずお綺麗ですけど、五月女さんて今年でいくつになられるんでしたっけ?」
思わず頭を抱える俺をよそに、五月女さんはあっさりと言う。
「34ですよ。あなたは?」
「26でーす」
「あら、じゃあ同じアラサーね」
「……」
舌戦では、五月女さんが一枚上手のようだが。
「もう……なにギスギスしてるの」
「ギスギスなんてしてないわ。ねえ――」
と同意を求める五月女さんの言葉を聞かず、高坂さんはソファーを立った。そして俺の腕を掴む。
「どっか行こ」
「どっかって?」
「どこでも! ここじゃ落ち着いて、打ち合わせにならないもん」
結局、高坂編集に手を引かれ、俺は強引に外に連れ出された。