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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第15章 エピローグ④ パートナー
「もう! めっちゃマウント取ってくるし。完全に姉さん女房気取りじゃん」
歩きながらも高坂さんは、まだ五月女さんの文句を言ってる。そして、俺の顔をじろっと見つめ、こんなことを聞いた。
「ね、ホントに仕事上だけのパートナー?」
その問いに対して、俺は即座に答える。
「もちろん、そうだよ」
過去にいろいろあっても、現在はそうだ。なにせ〝同志〟なのだから。
「そっか」
と、安心したように微笑んだ後で。
「でも実際、あんな風に煽られて焦っちゃうのは、自分に自信がないからなんだ。編集者として、まだまだだし……」
「高坂さんは、よくやってくれてるよ」
「ううん、全然ダメ。私だって――」
そう言いかけて、小走りに三歩先を行った彼女は――
「?」
そこで立ち止まると、背を向けたまま言った。
「ちゃんと、パートナーって言えるようになりたい」
「高坂さん……」
彼女の気持ちが、染みた。
俺の前に初めて、担当編集としての彼女が現れた時は、正直驚かされた。
「高橋先生を担当させていただくことになりました、高坂文水です」
「えっ……!」
顔を上げて微笑する彼女を見つめたまま、俺は暫く動けなくなった。
あの夏にデートした時、「こうなれたら、いいな」と彼女は自分の将来に対する想いを口にして、一人先に別荘を去った。その結果が、この時の再会に繋がったのだ。