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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第16章 エピローグ⑤ 誘惑?
でも、瑞月は――
「そんなに不安に思うなら、仕事を見にきてよ」
と、俺に言うと、撮影現場に俺を同行させたのだった。
そして、俺は驚くことになった。
「……!」
スタイリスト、ヘアメイク、それぞれの分野のプロの中で、瑞月はより自分を輝かせるために、積極的にコミュニケーションを取っていた。そしてカメラマンに対しても、撮影の合間は笑顔で接し空気を和やかにし、そしてシャッターを切られる瞬間には、凛としていて。
俺の知らない瑞月が、そこにはいた。
当時の俺は、まだ離島で仕事をする傍ら、新人賞に向けた作品をようやく書き始めた頃。既に先を行った瑞月を前に、焦りを感じたのも当然。心配をしている場合では、なかったのだ。
そうしてお互い立場を変え、そして名前を変え、こうして久しぶりに顔を合わせている。
「でも、どうして急に、会いたいなんて?」
連絡は瑞月の方からだった。メッセージがあったのさえ久々のことで、俺が受賞した時に【よかったね】と、実にシンプルなものが来て以来だった。
「まあ……どうかなって」
「どうとは、こっちの仕事のこと?」
「それも、だけど……なんというか、私に聞きたいこと、とかないの?」
どうにも歯切れが悪い瑞月を前に、一応なにかあったかと考えた挙げ句に。
「今、年収どれくらい?」
「は? なにその質問。ミーハーな一般人か」