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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第2章 コーヒーはブラックで
まだ、どろどろの欲望に沈み込む前。邪魔が入ったのは、そんなタイミングだ。ベッドの片隅に放りつけてあったスマホが、メッセージの着信を告げる。
反射的に伸ばそうとした手が、彼女の手によって遮られていた。
「いいじゃん。ほっとこうよ」
「だけど――」
一旦、彼女から顔を背け、上体を仰け反りスマホを手にした。
「――とりあえず、確認だけでも」
言いながら、目にしたメッセージはこのようなものだった。
〖やっぱカラオケ中止! 瑞月が気分じゃないって…〗
〖というわけでお迎えの方、お願いいたしまーす!〗
夏輝木葉からの一連のメッセージを見た時、正直ほっとした気持ちが大半だった。やはりあらゆる意味において、このまま情交に至ることに引け目を感じていた。
しかし刹那、俺の見せた安堵の表情に対し、彼女は失望を隠さなかった。
「で、なに?」
「ん?」
「あの子たち、なんだって?」
さっきまでと明らかに異なる勝気な眼差しに、内心やや慌てる。
「ああ、それが……ごめん。迎えに来てくれって」
俺としてみれば、メッセージは渡りに船だった。高坂文水の発する魅惑には、到底一人では抗い難かったから。当然、一方で残念に思う心理もある。が、この二週間、彼女に対しては、改めて向き合う機会も訪れるはずだ。
「へえ、そう。可愛い妹には、逆らえないんだ」
彼女はそう呟き、一旦はベッドの上から滑り下りるようにして、こちらに背を向け、そのまま床にしゃがみ込んだ。片膝を抱えるようにして丸めた背中の、その心中が見えない。
俺も追うように身体を起こし、ベッドの端に腰掛ける。