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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第2章 コーヒーはブラックで


「……」

 信号待ちで、前を向いたまま呆然としていると。

「お兄さん。青になりましたよー」

「あ、ごめん」

 後部座席から夏輝さんに言われ、俺は慌ててアクセルを踏んだ。そんなこちらの様子が、気になったのだろうか。

「どうしたの?」

「ん?」

「ボーッとしちゃって、なにかあった?」

 珍しくそんなことを聞いてきた瑞月と、一瞬だけルームミラー越しに視線を合わせた。そしてすぐに前に向き直り、言う。

「別に」

 精一杯、平静を装うその内側では、心臓が頻りと嫌な音を鳴らし続けた。

 別荘に着くと「荷物は運ぶから」と言い、先に三人を中へ入れたのは、高坂さんと顔を合わせるのが気まずかったからに他ならない。他の三人との距離を感じさせるマイペースな彼女が、出迎えるようにも思えなかったが。

 遅れて外からリビングへ赴くと、相変わらずテンション高めな夏輝さんの声が耳に入ってきた。話し相手は、ダイニングテーブルに座る高坂さんだ。

「――そんなわけで今度は絶っ対、文水さんも一緒に連れて行きますからね」

「了解。付き合いが悪くて、ごめん」

「ホントですよー。せっかく旅行に来てるのにぃ」

 プンと頬を膨らませた夏輝さんを宥めるように、高坂さんは言った。

「だから、ごめんて。今日はちょっと、朝から体調が悪くてさ」

「もしかして、生理でした?」

「ま、そんな感じ、かな?」

 生理……? 期せずして耳にしたワードを元に、自然と考えを巡らせていた。

 俺に対し一方的に施してきたのは、そういう事情があったせいなのか。もし本当にそうなら、昨夜の相手も彼女であった可能性は低いだろう。そう考える一方で夏輝さんに対し、単に話を合わせているだけのようにも……。 

 瑞月と松川さんは既に自分の部屋に行ったらしく、話を終え夏輝さんが二階に向かったことで、自然と二人が残された格好になった。女同士の赤裸々な会話の一部を耳にした俺に対し、しかし高坂さんは気に留めた風もなく自然な微笑みを向けた。

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