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落城
第3章 御開帳
「縄を解いてください」

牢を出ると、志乃は言った。しかし、章介は首を横に振った。

「だめです。志乃殿の腕前であれば、いつ何時逃げ出さないとも限らない。勝負が終わるまではそのままでいてもらいます」

「私は逃げるなどしません」

志乃は訴えたが、章介は首を振って、だめです、と言って聞いてくれなかった。志乃は諦めざるをえなかった。

「さあ、志乃殿、ここに仰向けに横になってください」

志乃は一瞬躊躇ったが、深く息を吸うと意を決したように戸板に乗った。着物の裾が乱れないように注意しながら、身体を倒していく。仰向けに横たわると、静かにまぶたを閉じた。

章介は、張形を手に志乃の足元にしゃがんだ。

「覚悟はよろしいか」

志乃は目を閉じたまま頷いた。

「ではまいります。志乃殿、足を御開きください」

「え、足をですか?」

「左様。足を開いていただかなければ、この名刀・随喜丸を志乃殿の体内に打ち込むことはできませんからな」

「……わかりました」志乃は頬を赤く染めながら、閉じていた足を左右に開いた。「これでよろしいですか?」

「まだまだ。もっと開いてください」

志乃は少し足の間隔を広げた。

「これでどうでしょうか」

「もっとです」

「これでは?」

「駄目です、もっと思い切って開いていただかないと」

「わかりました。これでどうでしょうか」

志乃にしてみれば精一杯だったが、章介は首を左右に振った。
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