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落城
第1章 プロローグ
佐々木章介は、山賊の屋敷の縁側で腕枕をしていた。

バタバタと慌ただしい足音が聞こえてくる。山賊の親分・悪太郎が戻ってきたようだ。

「旦那の言ったとおりでした。ガキと女を捕まえました」

悪太郎は興奮した顔でまくし立てた。

「そうか。でかしたな」

「でも、旦那。あの女、半端なく強いですね。ウチの若い衆が10人で一斉に斬りかかったんですが、みんな一瞬でやられちまって。3人はお釈迦ですよ」

「ほう、それでどうやって捕まえたんだ」

「ガキですよ。隙を見てガキを捕まえたんです。そいつの首にこう匕首(あいくち)を突き付けて、大人しくしろ、しないとこのガキの生命はないぞ、と脅したら、ようやく大人しくなりました。今は縄を掛けて牢屋にぶち込んであります」

「よしよし。では、早速お顔を拝見するとしようか」

章介は、どっこいしょ、と立ち上がった。

「旦那とあの女はどういう関係なんですか?」

歩きながら、悪太郎が聞いてきた。

「剣術の師匠の娘だ」

「剣術の師匠の娘!? どうりで強えわけだ」

「まあな。道場で勝てる男は一人もいなかったくらいだからな」

「旦那も勝てなかったんですか?」

聞き捨てならない質問に章介は足を止めて悪太郎を睨みつけた。

「そう思うか」

「い、いえ。すみませんでした」

悪太郎は首をすくめた。
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