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落城
第4章 蠢く指、這い回る舌
章介の指が鎖骨から首筋、顔へと移動してきた。唇をそーっと撫で、耳をくすぐる。志乃は追い払うように顔を振った。

「やめてください」

「くすぐったいですか?」

耳の後ろを撫でながら章介が尋ねると志乃は頷いた。

「清七郎殿は耳を愛撫しないのですか?」

「夫は私が嫌がることはしません」

「それはもったいない。ここが敏感なのに」

章介は、身体を倒すと、いきなり志乃の耳にしゃぶりついた。耳の中にフーッと息を吹き込んでくる。

「嫌っ、気持ち悪いっ」

二の腕に鳥肌が立った。何とか逃げようと志乃は縛られた身体を激しくのたうたせた。しかし、章介の唇は離れてくれない。もう片方の耳を指でくすぐりながら、耳の穴に舌を入れてくる。

「少し我慢してください。そのうち気持ちよくなりますから」

目を細めて楽しそうに舌をペロペロと動かす。

「ば、ばかなことを――」

志乃は必死に身体をよじり首を動かしたがダメだった。離れない。耳が章介の唾液でベトベトになっていく。次第に志乃の抵抗が弱くなっていった。

しばらくすると、章介の言ったとおり、くすぐったさが、なんとも言えない気持ちよさに変っていった。気持ち悪いのに気持ちいい。

どうして――。志乃は自分の身体の変化に驚いた。身体が火照ってくる。熱い。

「ハァ……」

志乃の口から艶めいた吐息が漏れた。

「ほらね」

章介がニヤッと笑った。
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