この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
落城
第2章 淫らな勝負
茜にとって志乃は実の姉のような存在だった。出会ったのは、8年前、7歳のとき。父に連れられ道場に行った茜は、その日から志乃から剣術の手ほどきを受けることになった。
志乃は強かった。卵型の小顔にほっそりとした身体、その外見からは想像できない速さで剣を繰り出す。稽古では大の男たちが次々と倒されていった。志乃は、すぐに茜の憧れの存在になった。志乃様のように強くなりたい――。茜は、毎日稽古に励んだ。
当時、志乃を嫁にしたいと考えている門弟は多かった。なんといってもこの美貌だ。志乃を目当てにわざわざ遠国から来て入門する者もいたぐらいだ。
そんな門弟たちに志乃の父、剣信は、試合で志乃に勝ったら婿に迎えると言った。剣信には他に子どもがいなかったからだ。
多くの門弟たちが尻込みした。中には勇敢に戦いを挑む者もいたが、ことごとく返り討ちにあった。
結局、志乃が20歳になるまで、志乃を破る男は現れなかった。そして、20歳になったその月に清七郎が志乃に挑み、大方の予想を裏切り勝ったというわけだ。
これをどう思うかは人それぞれだったが、茜は清七郎が勝って良かったと思った。明るい清七郎のことが好きだったし、何よりも清七郎といる時の志乃は本当に幸せそうだったからだ。
結婚してからも志乃は変わらず茜に稽古をつけてくれた。おかげで茜もそれなりには強くなった。でも志乃には勝てなかった。今でも志乃は茜の憧れの存在だった。
だから、今回のお役目を言われたとき茜は心から喜んだ。志乃の役に立てることが嬉しかったし、志乃が茜のことを頼りにしてくれたことが嬉しかった。
それなのに私は――。茜は自分の失態を悔いた。
志乃は強かった。卵型の小顔にほっそりとした身体、その外見からは想像できない速さで剣を繰り出す。稽古では大の男たちが次々と倒されていった。志乃は、すぐに茜の憧れの存在になった。志乃様のように強くなりたい――。茜は、毎日稽古に励んだ。
当時、志乃を嫁にしたいと考えている門弟は多かった。なんといってもこの美貌だ。志乃を目当てにわざわざ遠国から来て入門する者もいたぐらいだ。
そんな門弟たちに志乃の父、剣信は、試合で志乃に勝ったら婿に迎えると言った。剣信には他に子どもがいなかったからだ。
多くの門弟たちが尻込みした。中には勇敢に戦いを挑む者もいたが、ことごとく返り討ちにあった。
結局、志乃が20歳になるまで、志乃を破る男は現れなかった。そして、20歳になったその月に清七郎が志乃に挑み、大方の予想を裏切り勝ったというわけだ。
これをどう思うかは人それぞれだったが、茜は清七郎が勝って良かったと思った。明るい清七郎のことが好きだったし、何よりも清七郎といる時の志乃は本当に幸せそうだったからだ。
結婚してからも志乃は変わらず茜に稽古をつけてくれた。おかげで茜もそれなりには強くなった。でも志乃には勝てなかった。今でも志乃は茜の憧れの存在だった。
だから、今回のお役目を言われたとき茜は心から喜んだ。志乃の役に立てることが嬉しかったし、志乃が茜のことを頼りにしてくれたことが嬉しかった。
それなのに私は――。茜は自分の失態を悔いた。