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紅い部屋
第4章 9月中旬・金曜日━再会━
「あの…実は自分でこう、やってみたことはあって‥」
両手で紐を結んで引っ張る仕草をした。
ん?、とケイさんが目を丸くする。
「自縛…自分で自分を縛ったの?」
「子供の頃、一緒に住んでた祖父がとても厳しくて…怒ると両手首と足首を縛って納屋に閉じ込めるんです。
納屋は怖かったけど、縛られてる事は嫌じゃなかった。だけど、叱られてるのにこんな気持ちになったこと、誰にも言っちゃいけないしダメなことなんだって。
祖父が亡くなってからも考えないように、思い出さないようにしていました。
中学になってまわりも皆思春期で、誰と誰が付き合ってるとか、ちょっとエッチな話とか‥そんな話が流行っていた時期でした。
ふと納屋での事を思い出して…お風呂場でなんとなく…タオルで片方の手首と太ももを、縛ってみたんです。
そしたら何だか頭の中がふわふわしてきて、身体が芯から熱くて…次第に全身が浮いて漂っているような…」
目を上げると、さっきまで鋭かったケイさんの視線が柔らかく、優しくなっていた。
「あの時感じた心地良さより罪悪感が強くなって…だって友達やクラスの男子はこんな話、してなかった。私だけおかしいんだ、二度とこんなことしちゃダメだ、忘れようって。多分、無理矢理記憶を削ったのかもしれません」
「何年も封印してたのに、大人になってから思い出したんだね。強いきっかけがあったのかな」
“彼氏”
過去にたった一人だけいた、その人の顔が、その人の声が言葉が鮮明に蘇る。
「私…ダメなんです」
ケイさんの目をまっすぐ見る。
「私、セックスが苦痛で男性と付き合えないんです」