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紅い部屋
第5章 9月中旬・金曜日━夜の散歩━
ドライヤーで髪を乾かしてひと息ついた。
テーブルに置いた携帯を手に取る。
LINEを開くと、トーク履歴の一番上の"樋渡"の名をタップした。
帰り際、思い切ってお願いしたLINE交換。
快く応じてくれた。
家についてからもう何度も画面を見返している。
樋渡 圭吾(ひわたり けいご)
ケイさんの本名。
LINEの中で自己紹介された。
年齢は37才で、独り暮し。品川区内に通勤している。
"そこそこの管理職"で時々休みの日も呼び出されるらしくケイさん曰くブラックな会社、週に1度は宿直勤務もあるらしい。
平日のみ9時18時勤務の私に比べたらなんてハードワークなんだろう。
そんな忙しい中、時間を作ってくれたんだな…
トークの最後は
"おやすみ。また明日"
で終わっている。
また明日。
明日もLINEしてくれるってことだよね…?
ケイさんの色んなことが知りたい。
どんな小さなことでも。
テーブルのスタンドミラーがニヤニヤしている私を写して恥ずかしくなりそれをしまった。
ベッドに潜り込んで今日の事を思い出す。
横断歩道の向う側の、あの時のケイさんの目
少し怖ささえ感じた。でもずっとその目に見られていたいとも思った。
ケイさんは行為の時、あの鋭い目で相手を見るのだろうか。
ケイさんのSMって、どんなことをするの?
あのお店の品を使ってしてみたことはあるの?
右手をパジャマのズボンの中へ、更に下着の隙間に指を入れた。
絡む毛と2枚の襞の間に人差し指がスルリと入る。
安アパートの隣室に聞こえないよう声を殺す。
耳に届くのは荒い息遣いと
人差し指がたてる水を弾くような音
堪らず中指も併せ、奥へ奥へと這わせた。
早くなる指の出し入れとともに肉襞の間から流れるものはお尻を伝い、腰にまで達する。
ケイさん…圭吾さんに見られたい。
あの冷たい目で蔑まれるように。
見せつけるように両脚を大きく開く。
「…っ…っ…あ…!」
二指を挿れたままビクビクと全身が何度も波を打った。
あの時からずっと我慢をしていたせいかすぐに絶頂に達してしまった。
「…ふ…ぅ…」
息が落ち着きしばらくして起き上がると、下着どころかズボンやシーツまで濡れていた。
まるでお漏らしでもしたみたいに染みになっている。
こんなに濡れたことは初めてで羞恥で暫く動けなかった。