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紅い部屋
第1章 9月上旬・金曜日−扉のむこう−

扉の内側はやっぱり紅い革張りだった。

促されて薄暗い店内を進む。

短い通路を抜けるとすぐ
コの字型の10席程のカウンター。
店の奥に長くなっており、入り口から見るとコの字というより"U"の字の方がしっくりくる。

そのUの字の中に5、60代?くらいの白髪混じりのアゴヒゲの男性が立ったままこちらに顔をむけた。
ここの店長だろうか。

「お帰り」

すぐに私のうしろのサラリーマンに言ったのだと気付いた。

「珍しい。新しい子?」

「いや、そこで初めて会った。店の前にずっと立ってたみたいだよ。」

サラリーマンはそう言いながら慣れた様子で入り口が見渡せるカウンターの一番奥に座った。

観葉植物で隠れるようになっていたが
入り口から向かって右側の床が1、2段低くなっていて、更に奥にスペースがあった。
もしかして…

そのスペースに歩むと
そこには
小さなステージと
観客席らしきソファセットが4つ。

思わず"あぁ!"と声を漏らした。
ソファに顔を寄せて座っていた若いカップルがちらりと顔を上げた。
私はすみません、と頭を軽く下げた。

ステージの上の高い天井には太い梁が一本。
打ちっぱなしの壁にはフックがかけられる輪っかが幾つか付いており、その脇にはズラリと何本も鞭が飾られている。

「すごい…」


私がずっとネットの中で見てたSMの世界。入り口はここにあったんだ。



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