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紅い部屋
第6章 9月下旬・金曜日━混沌と冒険━
カウンターに伏せっているルカ越しに響に尋ねた。
「あの…お相手に特別な感情を抱くことってないのでしょうか、今日はこの方は来てくれないのかなぁ…とか…ホントはあの方としたかったのになぁ、とか」
「あるよ!」
てっきり寝ていたと思っていたルカが顔だけぐるんとこちらに向けた。
「でもそれはないから!」
うん?どっち?困惑していると
「ごめんね、この子酔うと言葉足らずなトコあるから」響がルカの頭を撫でた。「ない、っていうのは好きになったとしてもその先がないことはわかってるから。キチンと一線を引いてるの」
響は少し冷たい目をした。
「クラブには皆全員が恋愛しに来てる訳じゃないのよ」
息が詰まった。
「奥様や恋人には出来ないこと。誰にもカミングアウトしてないこと。そのもう一人の自分を開放しにクラブに来るのよ。クラブで非日常に浸かってそして日常に帰っていくの。私もルカも非日常の世界に生きてる女なのよ。私達はそう思ってる」
響の大きな瞳はどこか遠くを見ている。
『最後は奥さんや子供、大切な彼女の元に帰っていく御主人様や奴隷たち』
『私に残ってるのは背中や尻の鞭の跡。身体のあちらこちらに鬱血』
『でも…次はいつ会えるのかな期待していいのかな』
だんだんと蝕まれていく 心
あぁ、だから世界を分けるんだ。
お互いに全部欲しいって思わせないように。壊れてしまわないように。
『私は御主人様の、奴隷の』
『大切な家族が知らないことを全て受け止めているよ』
『あなた達が想像もつかないことを私達してるのよ』
…優越感。
そしてなんとなく区切りをつけて
また次へと渡り歩くんだ。