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紅い部屋
第7章 10月上旬━現実を見る━
10月に入り朝晩は肌寒く感じる。
ブルゾンを羽織って挨拶もそこそこにフロアをあとにした。
『今週の金曜日、店に行く予定。都合良かったらおいで』
圭吾さんからのお誘い。
前回会ってから2週間程経っていた。行かない理由がない。
あれから毎日、LINEのやり取りは続いている。
少しずつプライベートな事も聞けるようになって、はじめの頃よりはコミュニケーション能力が上がったと自負している。
店内は賑わっていて、カウンター席はほぼ埋まっていた。
シンさんが私に気付いて、ステージのあるフロアを指差す。
圭吾さんは4組あるソファ席の、ステージに近いひとつに座っていた。
ソファは敢えてそうしているのか2人掛けで、当然カウンター席の時よりお互いの距離が近い。
「お疲れ様です」
と声をかけてなるべく端っこに座った。毎日LINEしているのに、変に余所余所しくなってしまう。
シンさんが私の分の烏龍茶と圭吾さんが頼んだポテトフライとナゲットのバスケットをテーブルに置いた。
「佐和ちゃんこないだはあんまり絡めなくてゴメンネ」
いえいえ、と顔の前で手を振ると圭吾さんの顔が険しくなった。
「ひとりで来たの?」
「あのっ、圭吾さんがお仕事忙しくしてる時で…誘えなくて、でもこのまま家に帰るの嫌で…」
「先週か。何か収穫はあった?」
「クラブの女性とお話しました。S嬢とM嬢の方で、お二人共とてもきれいで…」
「何を話したの」
被せるように聞いてきた。
━怒ってるのかな。私、そういえば圭吾さんにお店に行くって事前にLINEしてなかった。気を悪くしたかな。
「多頭飼いの話が出ました」
「ほぉ」
圭吾さんはケチャップをたっぷりつけてポテトを頬張った。
「どういう意味かネットで調べてきました」
そう、それはひとりのS男性が“奴隷”とか“従者”と呼ぶ女性を複数従えてる関係性だった。
その方は女性達を平等に愛し与えていて、女性達もその状況に満足している。同じ男性を慕っている“同士”のように見えた。
「そんなことまで勉強してきたの」ふふっと笑って「多頭飼い=ハーレムだなんてそんな簡単なものじゃないよ。多頭することに納得していて、この状態を理解し望んでいる女性達じゃないと関係が作れない。恋愛と主従関係は別物と割り切っている方がいい。1人でも嫉妬深かったり、自己顕示欲が強かったりすると崩壊するからね」