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紅い部屋
第9章 10月中旬━蜘蛛の糸━

あれ?

キーボードの下から出てきた3つ折の紙。
開くと午前中に郵送したはずの取引先の請求書…

誤送付。サーッと血の気が引いていく。

すぐさま上司に報告する。
営業担当が先方に謝罪し、後日請求書を回収しに伺う事になった。

「客先から指摘される前に気づいたのは幸いだけど、信用問題に関わるからね」
別室に呼ばれ上司と営業に注意され謝罪し、反省文と対策書を提出した。
周りは気を使って聞こえてないフリをしてくれてるけど、それが逆に辛い。

時間が押してしまった分残業して帰宅した。
頬に当る秋風が厳しい。

『遅くまでおつかれさま』

LINEの文字なのに、圭吾さんの顔が浮かんで、泣きたくなってくる。
愚痴をこぼしていいんだろうか。

『仕事でミスをして、色んな人に迷惑を掛けてしまいました。そのための残業でした』

ソファに蹲りながらLINEを返す。
しばらくして、聞き慣れないコロコロした音楽が携帯から鳴り出した。
驚いて画面を注視すると、音声通話の着信音のようだ。
長らく鳴った事がないから、操作に戸惑った。

『もっもしもし圭吾さん』
なぜかソファの上に正座をしてしまう。

『うん。大丈夫?』

『通話がかかってきたことあまりなくて…すみません』

『仕事の方』

『…そっちは…』

『いつも通りご飯食べて、しっかりお風呂入ってちゃんと寝なさい。明日も仕事行くんだよ』

『眠れるかわからないですし…会社行きたくない』

『部屋を暗くして携帯は置いて、目を瞑っていなさい。眠りに落ちなくても、脳が少しは休まるから。
それと、ちゃんと朝出勤しなさいね。行かない方がもっと迷惑をかけることになるんだよ』

『…ぅ』

『返事は?』

『はい』

『仕事の上でミスが起きるのは誰にでもあることだ。同じ間違いをしないように落着いて、仕事で挽回して行けばいいんだよ』

『…はい』

圭吾さんとの初めての通話は、部下がやらかしたミスに対する上司からの慰め…といった内容だった…

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