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紅い部屋
第12章 11月上旬━佐和の隠し事━

今夜は所属部署の飲み会だった。
先日仕事でミスをしてしまったから何となく断り辛くて参加した。

2次会組と別れ、檻から解放された気分でほっとする。
出来るだけすみっこの方にいたけど、女性陣のマウント合戦に絡まれた。
慣れてるし…かと言って言い返せるエピソードもないし…ただただ疲れた。

時間もまだ早いし、このままシンさんのお店に寄ることにした。
ちょっと気分を変えたい…というのは建前で圭吾さんから時間があれば行くかも、と聞いていたからだ。
LINEは何も入っていない。お店にいたらいいなぁ。

最寄りに着いて通い慣れた道を歩いていると、少し先に見たことのある背中がある。隣にはスーツ姿で髪の長い、細身の女性。

圭吾さんだ。間違いない。

もしかしたら同じ電車に乗ってたのかもしれない。
バーに行くのか、2人を追う形になってしまった。

微かに聞こえる、知っている声と落ち着いた感じの女性の声。
会話が途切れてる様子はないけど内容はわからないしわかりたくもない。

…行くのやめよう

回れ右をして駅に戻る。

ふくらはぎが痛いくらい無意識に早足になっている。
駅に向かう途中、正面から歩いてきたおじさんとぶつかる。端に寄ったけど、間に合わなかった。ぶつかる前目が合ったからわざとかもしれない。時々こういう人はいる。
痛ってえなぁ!と舌打ちされた。
すみません、と振返って改札に入る。ぶつかった右肩が痛い。

電車は空いてたけど座らない。座ったらそのまま終点まで行ってしまいそうだ。

乗り継いで駅を出て、コンビニで缶ビールを2本買った。

アパートの階段を駆け上がって部屋に入ると、とたんにボロボロと涙がこぼれてその場にしゃがみこんだ。

私、圭吾さんのこと好きなんだ。

好きで、誰にも取られたくないって思ってたんだ…

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