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紅い部屋
第13章 11月上旬━ひよこからニワトリ━
圭吾さんの事となるとストレートに聞けなくなってしまう。
「あの…圭吾さんが先日一緒だった人…」チラチラとシンさんの様子を伺う「お友達…なんでしょうか…」
「誰かと一緒に…?そんなことあったかな。いつのこと?」
私は具体的に2人を見かけた日時を告げた。
「あー、何だか混んでた日ね。その日はケイ君ひとりだったよ」
「えっ、でも髪の長い女の人が一緒に歩いて…」
思わずおしぼりをくしゃくしゃにして顔を上げた。
「じゃあ店に入る前にそのコとはバイバイしたんじゃなぁい?1時間位で帰っちゃってゆっくりさせてあげられなくて悪いなぁって思ったからよく覚えてる。間違いない」
シンさんがごまかす理由なんかないし、ホントに店の前で別れたのかもしれない。
どういう人だったんだろう…
「佐和ちゃん」シンさんは腰に手を当て「ケイ君の事信用してないの?」
「えっ」ブルブルと首と手を横に何度も振る。
「違います!ただ…圭吾さんってもてるだろうし…そんな事聞くの変に思われるかもしれないし…」
またおしぼりを四つ折りに直した。
ふぅ、とシンさんが大きなため息をつく。
「あのねぇ」
いつもとは違う声のトーンに背筋が伸びる。
「ケイ君は自分に靡くMのコだったら誰でもいいなんてそんな男じゃないよ」
その言葉にハッとする。
「…ごめんなさい…」
「佐和ちゃん、もっと自分に正直になって」
はい、と返事をしたつもりが掠れた小さな声しか出ない。
「もし当たって砕けちゃったらここに来て!朝まで一緒に泣いてあげるから!」
シンさんは大袈裟にウインクして両手を広げて大きな声で笑った。
「もう…縁起悪いです…」
私もつられてくすりと笑ってもう一枚のトーストにかぶりついた。
しっかりと行き先を決めよう。そう思った。