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紅い部屋
第15章 11月中旬【打破】
伝わってくる程ガチガチに緊張している佐和を横目に、ウインカーを出して左にハンドルを切った。
駐車場から少し離れた建物の自動ドアをくぐるとゴテゴテのリゾート風の内装、各部屋の写真が付いたタッチパネルがあり全国どこでも似たような造りなのかと逆に感心する。
適当に空いている部屋を選んで室内に入ると、とりあえず扉という扉を全て開けて間取りを確認してから黒い革張りのソファに座った。
職業病なのかそうしないと落ち着かない。
佐和はそんな俺の行動を部屋の入口に突っ立ったままじっと見つめて微動だにしない。
流石に今日プレイしようなんて思っていないけど今から判決を聞く気分だろうから無理もないか。
手招きしてペットボトルのミネラルウォーターを渡すと受取ったあとまた少し離れてその場にペタリと座った。喉が渇いていたのか一気に1/3程飲んでしまった。
「ラブホなんて何年振りかなぁ」
「わっ私もです…」
確か学生の時に、と前に聞いた。
その男に身体に傷が残るような事をされたのだろうか。
それを見ても見なくても返事は決まっているけど
佐和が自分で乗り越えないと意味がない。
「そのまま立って」
佐和はソワソワと視線を泳がせたあと、ペットボトルを床に置きゆっくり立ち上がった。
「そこで全部脱いで」
「うっ」
息遣いがここまで聞こえてきそうだ。
泣きそうな顔で背後に両手をまわしファスナーを下ろす。ストンと足元にワンピースが落ちた。
続けて黒いタイツに指を掛け上半身を屈め脱いでいく。だんだんと肌が露わになる。
その時に右下腹部の傷跡に気が付いた。
手術痕だろうか。腹の肉がその部分だけ凹んでいるように見えたが腕で隠されてしまった。
そしてもじもじと身体を屈めながらこちらに視線を寄越した。
「それも、全部」
上下とも装飾がなく、ブラジャーに至っては胸を全部覆うタンクトップみたいな形。腕や指で一生懸命隠しながらそれらを全て脱ぎ終わった。
それでも背中を丸めて肝心の所は手で抑えちっとも見えない。
「手を下ろしてまっすぐ立ちなさい。もっとこっちに来て」
何やら呻いて意を決したように気をつけの姿勢になるとまるでぜんまい仕掛けの玩具みたいに小刻みに寄ってきた。
目の前の裸体を眺める。
素直に、綺麗な身体だな と思った。