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紅い部屋
第2章 9月上旬・金曜日−広がる世界−
そこには探し求めていた光景があった。
裾の長い白いブラウスと黒い下着だけを着た若い女性が男性に麻縄で縛られていく様を連続写真のように写したものだった。
場所はこの店のステージだ。
胸元、腹、股に縄がまわり
女性が徐々に恍惚とした表情になっていく。
両手首を頭上に一まとめに縛られてその縄の先が例の天井からぶら下がるフックにかけられている。
縄が身体中に食い込んでいるが苦しそうではない。むしろ目はとろんと虚ろで口は半開き、両の乳首は硬く勃ちあがっているのがブラウスごしでもわかる。
ページをめくる。
お馴染みのステージの上に先ほどとは異なるボンテージ姿の女性が四つん這いになり上半身は伏せお尻を高くあげている。
両手首は後ろ手に拘束されている。
女性の頭部全体にラテックスのマスクが覆っており、赤い口元でしか表情を伺う事が出来ない。
次の写真では、また別の女性の白いお尻に赤い筋が出来ている様子。
徐々に徐々に筋は増えていく。アルバムの最後の方ではお尻は真っ赤で元の白い肌は見えない。
ステージを少し遠くから写した写真には、女性から離れたところに鞭を片手にした男性が立っているのが写っていた。
この鞭でお尻を叩かれていたのだ。
もっともっと見たい。
2冊目のアルバムに手を伸ばしたところで
「おや、はじめましてかな?」
私のすぐ側で声がした。声をかけられるまで男性が立っていることに気がつかなかった。
「あ…えと…はい…」
アルバムを見られたかな。
思わずうつむく。
50代くらいの白髪交じりのその男性は私より若くモデルのように綺麗な女性を連れていた。
この女の子も写真のような事をしているのだろうか…
私がつまらない女だと思ったのか、すぐにステージのある方へ行ってしまった。
店長がキッチンからサンドイッチの乗った皿を手に出てきて向かいのサラリーマンの前に置くと、あわただしく先ほどの白髪の男性カップルの方に行ってしまった。
向かいのサラリーマンと一瞬目があった。
隠している何かを見透かされそうで、私はすぐに視線を落とした。
アルバムを開こうとした時、紅い革張りの扉が開いてまた人が入ってきた。
閑散としていたのはほんの一時だけだったようだ。