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父子の夜
第3章 長い1日
「……父ちゃんが話つけてやるから、田辺先輩んとこ行け」
少しの沈黙の後、歩き去る足音が聞こえ、雄平は顔を上げた。くしゃくしゃに顔を歪めて泣いている。
「夜中の事…悪かった。スマン」
不意に立ち止まると、背を向けたまま鉄平は犯した事を詫びた。
「ほんとは謝るつもりはなかった。これから先も、お前にああいう事するつもりだったから、慣れてほしかったしな。……でも、今なら言える。あんな酷い事して本当にすまなかった」
鉄平は振り向きもせず、扉を開けて出て行った。
「…うっ…とぉ…とぉちゃ…父ちゃんっ!待ってぇ!!行かないで!!!」
雄平は激痛に耐え、立ち上がると、まだ何か、棒のようなモノが突き刺さっているかのような感覚の肛門を庇いながら、がに股で鉄平を追いかけた。
「とぉちゃっ…ぐすっ…待って…待って…っ」
鉄製の錆びた階段をずり落ちるように降りて、雄平は道路に飛び出した。
しかし、鉄平の姿は何処にもなかった。
「父ちゃあんっ!父ちゃあんっ!!父ちゃあんっ!!!」
暮れかけた空に雄平の泣き声が響く。そのあまりに悲痛な音色に近所の犬が遠吠えをあげたのだった。