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父子の夜
第4章 俺の息子
平岡親子の住む6畳一間のアパートの前の、車通りの少ない道路にへたり込み大声で泣きじゃくる雄平。
その哀れな姿を、鉄平はアパートの陰に隠れ虚ろな目で見つめていた。
雄平があんな風に鉄平に怯えたのは初めてだった。
(ごめんな……雄平……良い父ちゃんでいられなくて、ごめんな……)
予想以上にショックだった。
…あんな事をしてしまったのだから怯えられるのも当然で仕方のない事だと覚悟はしていたが、やはりショックだった。
(弱くて、情けない父ちゃんでごめんな………)
鉄平は1人で妻の後を追うつもりでいた。
雄平の首に手をかけてわかった。自分は雄平を殺す事などできない…と。
だから置いていく。自分1人でいく……。
泣き喚いていた雄平の声がピタリと止んだ。
鉄平がそっと覗くと、雄平はヨタヨタしながら階段を駆け上がっていった。
その隙に立ち去ろうとしたが、すぐさまドアが開く音がして鉄平はもう一度隠れた。
「うっく…んぐっ…ぐすっ…」
雄平は小便でグショグショに濡れた白ブリーフ姿のまま駆けていった。もう薄暗くなったとはいえ恥ずかしい格好ではある。……が、雄平にとっては、それどころではないのだ。