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父子の夜
第4章 俺の息子
自然と鉄平の足が雄平を追った。
付かず離れずの距離を保ちながら雄平の後をついていく。よろけながらも必死に走る雄平。
その雄平の小さな手には鉄平の置いていった財布がしっかりと握られていた。
向かったのは駅前のコンビニだった。駅周辺は人通りも多く、雄平の下着姿はとても目立つ。
それでも、雄平は人の目など構わずに一直線に公衆電話へと向かうと、受話器を取り、財布から小銭を出して投入口へと入れる。
アパートに固定電話は引いていない。鉄平が所持している携帯電話だけが、唯一の連絡手段だった。
雄平は必死に番号をプッシュしている。それを見て、鉄平はポケットの携帯の電源を慌てて切った。
「父ちゃん!父ちゃん!帰ってきて!ボク…父ちゃんと一緒に居たいよ!帰ってきて…ねぇ、帰ってきてっ…父ちゃんっ…ボクの事…置いていかないでっ……うううっ…ちゃんと言う事聞くからっ…帰ってきてっ……」
一気にまくし立て、雄平はしゃがみ込んで大声で泣いた。
しかし、すぐに立ち上がりもう一度受話器を持った。
留守電のアナウンスを聞き終え、またメッセージを吹き込む。