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父子の夜
第13章 追憶
 
 
 休憩時間を知らせる軽快な音楽と共に作業を切り上げ、鉄平たちは昼メシを食べに休憩所へ向かう。

「今日も、あっち~な!いつまで続くんだ、この暑さは!」

そう言いながら鉄平の肩に腕をまわす田辺。くっついてくるのはいつもの事なので嫌ではないが、さすがに夏は勘弁してもらいたい。
鉄平は田辺の太い腕をすり抜けて体を離した。

「田辺先輩。暑苦しいっす」
「あ?休憩所までの我慢だ」

再び肩を掴まれた鉄平。今度は抜けられないようにもう片方の腕も添えられた。
鉄平は諦めてそのまま休憩所へと向かう。

昼食はおにぎり3個。鉄平お手製の爆弾握りだ。アルミホイルをペリリと剥がし、ラップを外す。

「へぇ、オマエ意外とマメな奴なんだな」

おにぎりにかぶり付く鉄平を尊敬の念を込めて見つめる田辺。自身は身重の妻が作ってくれたお弁当だ。

「簡単すよ。握るだけですから」
「だけど…朝からはめんどいわな。でも…そろそろ俺も、自分の食いモンくらい作れないといけないよなっ…親父になるんだしっ!」

料理など全く作れない田辺も、気合いを入れてゴリラ面をキリッと引き締めた。




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