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父子の夜
第13章 追憶
『父親になる』田辺と、
『父親ではなくなった』鉄平。
正確には、普通の父親ではなくなった……というところか。
形こそ雄平は息子なのだが、鉄平は雄平の事を恋人のように思っている。
仕事中も、おにぎりを頬張る今も、雄平が愛しい。
「なぁ!なぁ~!鉄平!」
鉄平の肩をチョンチョン…と指で叩く田辺。そのゴリラ面に不気味な笑顔を浮かべている。
「……なんすか?」
「そういえばな、ウチの子供…性別わかったんだ!どっちだと思う?なぁ?」
ニコニコとゴツい顔を綻ばせる田辺の幸せオーラは、鉄平の体に纏わり付くかのように濃厚だ。
「男の子じゃないと……」
鉄平は言葉を詰まらせる。
「じゃないと……なんだ?」
「……いえ、別に」
田辺のゴリラ面にそっくりな女の子なんて、哀れで仕方ない。
「俺に似た女の子じゃ嫁に行けなくて可哀想じゃないっすか~……とか、そういう意味か?」
「違うっすよ…!ちがっ…イテテテ!先輩っ!」
田辺はユラリと立ち上がり、手を横に振って否定した鉄平に問答無用でフロントチョークをお見舞いする。すると鉄平はすぐにタップした。田辺は馬鹿力過ぎて、ケガしそうで怖い。