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父子の夜
第13章 追憶
 
「いいじゃねぇか。嫁に行けなかったら俺たちの元にずっと居ればいいんだ!」
「ま…マジで女の子なんすか!?」

驚きに目を見開く鉄平の頭をどついて、田辺は「男の子だ」と答えた。

鉄平は、ふと思い出す。
妻とも、こんな話、したっけな…と。




『鉄平!お腹の赤ちゃんの性別わかったよ!どっちだと思う?』

『わかったのか?うーん…女の子?女の子がいいなぁ』

一姫二太郎とも言うし…。最初は女の子で。鉄平の理想でもあった。

『ぶー!男の子でした~!酷いねー、女の子がいいとかー』

元子は自身の腹を、白く細い手でそっと撫でる。当然だが、もう母の顔をしている。
その優しく撫でる妻の手を、鉄平のゴツゴツした掌が覆う。そして一緒に腹を撫で始めた。

『そりゃ、女の子がよかったけど、男なら男でもいいよ。どっちでも俺の子供には違いないわけだしっ!』

『ふふ。慌てちゃって~……ところで、どうして女の子がいいの?』

それは愚問だ。
鉄平は少し照れたように小声で言う。

「オマエに似た可愛い女の子なら嬉しいからだよっ」

「でも…女の子はお父さんに似るって言うよ?」




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