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父子の夜
第4章 俺の息子
「父ちゃんっ…ボク…もう泣いたりしないからっ…もう声出したりしないからっ……父ちゃんの言う通りにちゃんとするからっ……帰ってきて……1人にしないで……ぐすっ……父ちゃん……父ちゃあん……っ」
雄平はメッセージを吹き込み終えると、また踞って泣く。その繰り返しを何度か繰り返し、財布の中の小銭が無くなった。
「……うっ…んっく…とぉちゃっ……」
途方に暮れ、コンクリートの上に座り込んだ雄平に、行き交う人々は好奇の目を向けながら足早に通り過ぎていく。
その様子を少し離れた街路樹の影から見ていた鉄平。その虚ろな目から涙がこぼれた。妻を亡くした時以来の涙だった。
今すぐ雄平の元へ寄り添い、抱き締めてあげたかった。
しかし、雄平の元へ帰っても何も変わらない。悲しいままだし、苦しいままだ。
それは雄平も同じ。
一歩、雄平の方へと踏み出した足が元の位置へ戻る。
(……こんな俺なら雄平の傍にいない方がいい)
鉄平はその場を立ち去ろうと背を向けた。
その時。
「君…ちょっと、君」
背後で男の声がする。
明らかに、声をかけられる要素があるのは雄平だけだった。
鉄平はすぐさま雄平の方を振り返った。