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父子の夜
第14章 今宵の月のように
「さぁ…て、メシでも作ろうかな……」
「………」
鉄平はスッと立ち上がり、キッチンへと向かう。雄平もその背後にピタリとついて行った。
あの日の昼食時に妻との思い出が頭に浮かび、
『雄平は息子なんだ』
と改めて再認識させられた。
そして今、妻と雄平への罪悪感に苛まれている真っ最中だ。
誰にも打ち明けられない悩みは、結局は自己解決以外に解決策はない。
「雄平……素麺でいいか?」
「うんっ」
加えて食欲不振。食い物も喉を通らず、作るのも億劫なのだ。
素麺を茹でる鍋を洗おうとシンクを見ると汚れた食器が溜まっていて、鉄平はウンザリする。
「ふぅ…」と息を吐き、スポンジに手を伸ばすと、視界の端に雄平の小さな手が映った。
鉄平に触れようとして、触れずに引っ込めたようだ。
(……ごめんな…雄平)
そう思いながらシンクに視線を戻す。そして溜まっている食器を眺めて思い起こすと、ずっと素麺が続いている。
食欲のない自身はともかく、育ち盛りの雄平にまでそれを強いていた。
「…………」
鉄平は雄平を押し退けて部屋に戻る。