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父子の夜
第14章 今宵の月のように
そう言って、鉄平は自身の事のように誇らしげに笑う。先ほどまで泣いていたのに上機嫌に笑っている。
そして、「もう一杯!」と店主にコップを差し出した。
日付が変わった深夜、鉄平と雄平は店主に見送られて店を出た。鉄平も雄平もカウンターで眠ってしまっていたのだ。
「すっかり遅くなっちまったな。スマンな、雄平」
「ううんっ、ボク、楽しかった!」
「そうか!そりゃ良かった」
鉄平は欠伸を噛み殺し、雄平にニカッと笑いかける。表情は家を出る前とは大違いだ。
雄平は、鉄平の復活を喜び自ら鉄平の手を握った。鉄平もその小さな手を握り返す。
ふと見上げる夜空には、まん丸な満月が凛とした美しい光を放っている。
鉄平は思う。
『俺は…太陽の光を受けて輝く、あの月のように、雄平の光を受けて生きていきたい』
元子、スマン……。
ずっと雄平の傍に居たい。
一時は後を追う事も考えた。それほど妻は、鉄平にとってかけがえのない存在だった。
でも、今は……。
「父ちゃん…綺麗なお月様だね」
「ああ……綺麗だ…」
鉄平が空を見上げ立ち止まるのを見て、雄平も空を見上げる。
今は……雄平が何より大事だ。