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父子の夜
第4章 俺の息子
 
すると、コンビニから出てきた中年の男が小さな袋を手に提げたまま雄平の側に近づいていく。

雄平は歩道にへたり込んだまま男を見上げると、男は何かを雄平に差し出した。

携帯だ。

「君、ずっと電話してたね。お金無くなったのなら、オジサンの携帯使うといい」

雄平は、その申し出に首を横に振って断った。

『知らない奴には関わるな』

滅多に叱らない鉄平が雄平に口煩く言ってきた言葉。
人懐っこい雄平が見知らぬ男について行きそうになった事が何度かあり、それだけは強く言い聞かせてきた。

「遠慮しなくていい。急ぎの用なんだろ?間に合わなかったら大変だ。早く電話した方がいい」
「…………」

少し離れた場所にいる鉄平には会話は聞こえない。ただ、男が言ったその言葉に、雄平が身動きも取らず、じっとしている姿は見えていた。

雄平は迷う。鉄平に怒られるかもしれない。でも、まだ電話をかけたい……。

気が動転していて、雄平はコンビニでの両替さえ思いつかなかった。

そして、震える小さな手が、男の差し出す携帯を受け取った。

「よほど急いでたんだね」

男は雄平の下半身を指差す。


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