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父子の夜
第15章 満月の夜の獣たち
 
「と…父ちゃんズルいよぉ!」
「何が、だよ。クク…」

思わず雄平は叫んだ。鉄平の嘲る様子に腹を立てたのだ。
「ぐぅぅー…っ」と、犬の唸り声のようなものをあげ、鉄平を掴まえようと必死に腕を振り回す雄平。
「よっ」「オラ、どうした!」「まだまだ!」と順調に雄平の繰り出す手を避けていた鉄平だったが、酔いからか足が縺れ、畳の上に転がってしまう。

「イテテ…」

雄平が落ちないように、鉄平自らが下になるように転ぶ。
背中が叩きつけられ、一瞬息ができず顔を顰めたのだが、雄平は構わずにキスしてきた。

(『優しい子』が聞いて呆れるな……。「大丈夫?」の一言も無しかよ……)

雄平のぎこちないキスを浴びながら吹き出す鉄平。雄平はそんな事を気にもしない。

「んっ…ちゅ…」

やっと捕まえた……とばかりに鉄平の頭部を腕で抱え込み、雄平は柔らかな唇を何度も何度も押し当ててくる。
言葉にこそ出さないが、
『好き』『大好き』…と、愛を囁くように、いとおしそうに、雄平はキスを続けた。



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