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父子の夜
第4章 俺の息子
真っ直ぐに向けられる視線に、鉄平は目を逸らす。
「立て、雄平」
雄平は即座に立ち上がった。
「……ちと臭いけど、これでいいよな?」
鉄平は首に引っ掛けていたタオルを手に取り匂いを嗅ぐ。汗が染み込み乾いた、鼻をツンとつく匂いがした。
それでも「家まで」と、ブリーフを隠すように雄平の腰に巻く。
そして片腕で雄平のガリガリに痩せた体を持ち上げた。
「帰るぞ」
その言葉に何度も頷きながら泣き出した雄平。鉄平の首に腕をまわし、絞め技の如くギュウギュウ抱き締める。
「とぉちゃ…戻ってきて…くれて……ありがと……ありがと……ありがとっ…」
嗚咽を漏らしながらも懸命に気持ちを伝えようと、雄平は鉄平に強くしがみつく。
「前が見えねぇだろ」
鉄平がそう言っても雄平は力を緩めようとはしない。
それは、もう離さない…そんな強い意志の表れだった。