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父子の夜
第5章 そして、始まる
それからの数日はいつもと同じような日々を過ごした平岡親子。
正確に言えば、母が亡くなった後の日常と同じような日々を過ごした。
鉄平は相変わらず口数は少なく、家の中はシーンと静まりかえっている。雄平ももともとがおしゃべりではないだけに鉄平が口を開かないと自分から話しはしない。
しかし、以前と変わった事が1つ。父まで失う怖さを知ったせいか鉄平にずっとくっついているのだ。
鉄平が仕事から帰宅して着替える時も、夕食の支度をする時も、食事の時も。鉄平のすぐ傍にいる。気を抜いていて、鉄平も声を出しそうなくらい驚いた事もあった。
そんなにくっついていても、
眠る時は離れて眠る。
1日の集中が途切れてしまうのか、あの夜を思い出すのか。
それは雄平しかわからない事なのだ。
体一つ分開いた鉄平と雄平、親子の距離。近いようで遠い。
眠る時はいつも雄平に背を向ける鉄平。
もう二度と、あんな事はやらない。
そう心に誓って雄平の元へ戻った。
それなのに……。
また雄平の体に覆い被さる自分がいた。
(……別に、雄平と直接交わした約束じゃない。破ったって、誓った事さえ知らないんだから破った事にならない)