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父子の夜
第6章 思い出の更新
「嫌か?雄平」
「嫌じゃない……よ?」
明らかに動揺している雄平。袋に汚れ物を入れているが、完全に上の空だった。
夕飯は焼き肉丼。牛ではなく豚肉と玉ねぎを焼き肉のタレで炒めたものを飯の上に乗せただけのシンプルなものだ。
鉄平も雄平も大好物なもの。
しかし、
「雄平、残すなよ」
「う…うんっ…」
緊張して食べ物が喉を通らない。雄平は先ほどから激しい動悸がして冷や汗をかいていた。
『怖い』
河豚のように頬っぺたを膨らませ飯をかっ込む雄平。それらを全て麦茶で胃に流し込んだ。
飯を食い終わると2人は荷物を持って銭湯に出掛けた。
母が居た頃は洗濯物など持っては行かなかったが、今はずぼらな鉄平がやり方を変えた。
行く途中のコインランドリーで汚れ物を洗濯機にかけてから銭湯に行く事になった。
前を行く鉄平の大きな背中。
それだけを見つめながら雄平は小走りで後ろをついていく。
歩幅が違う上に鉄平が歩くのが速い。だから、必死についていく。
見失わないように…。