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父子の夜
第6章 思い出の更新
銭湯からの帰り道、コインランドリーで洗った洗濯物を新しい袋に詰めていく。
「雄平、コーヒー牛乳飲んで帰ろうか」
「うんっ!」
先日、雄平がパンツ姿で公衆電話を使った、駅前のコンビニに寄る。
そして紙パックのコーヒー牛乳を1つを持ってレジへ行く。
◆◆
『まず、父ちゃんからな!一家の大黒柱だからな!』
鉄平はいつも半分近くを1人で飲み干していた。
『あ~!鉄平ったら…!いつも多く飲み過ぎよ!私と雄平の分が無くなっちゃうじゃない!ねー、雄平』
『うんっ!』
母はいつも怒ってはいなかった。幸せそうだった。
雄平の右手は母と繋ぎ、
雄平の左手は鉄平と繋ぐ。
『ほらよ!雄平、飲め!』
『うんっ!』
鉄平が雄平の口元に紙パックを近づけ、飲ませる。
こぼれないように上を見上げると、頭上で鉄平と母がキスをしていた。
赤くなった顔を正面に戻すと、雄平は両親と繋いだ両手をブンブン力強く振った。
甘いコーヒー牛乳と鉄平と母。
雄平はとても幸せそうに笑っていた。
◆◆
母が死んでから初めてのコーヒー牛乳。
鉄平に「先に飲め」と渡された雄平。少しだけ飲んで、すぐに鉄平に渡した。
鉄平も少し飲んで雄平に渡す。