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父子の夜
第6章 思い出の更新
 
まるでパス交換でもしているかのように延々と続くやり取り。
自分が投げたボールを受け取り、返してくれる。
それは雄平にとっては会話をしているような感覚だった。

「残り全部飲め」
「うんっ」

受け取った紙パックを雄平は両手で持つ。
もう、コーヒー牛乳はほとんど入っていない。片手で十分持てる重さだ。

鉄平を見る。
右手には洗濯物を詰めたビニール袋。雄平に紙パックを渡し空いた左手は携帯を触り始めた。

あの頃のように手は繋がれていない。


「危ねぇから、もっとこっち来い」

前方から来た自転車が雄平のすぐ側を通り過ぎ、鉄平は去っていく自転車を睨み付けながら雄平の肩を抱き寄せた。

その手は離れる事なく、アパートまで雄平の肩をしっかりと抱いてくれていた。
雄平は触れられるのが嬉しくて、嬉しくて…、
鉄平の体に頭をそっと擦りつけた。

雄平は思う。
この幸せな時間が、ずっと続きますように、と。




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