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父子の夜
第9章 求め合う二人
午前7時。休憩所には厳つい男達が集まっていた。
煙草を吸う者、自販機のジュースを飲む者、クーラーのガンガン効いた休憩所でただただ談笑する者。それぞれが始業までの時間を思い思いに過ごす。
「うっす」
休憩所のドアを開けて、眠そうな顔の男が入ってきた。
鉄平だ。
「よう、鉄平!ちっせぇ声だなぁ!お前!」
ドアのすぐ近くで同僚達と談笑していた田辺祐太朗は鉄平に近づき、パコンと頭を叩いた。
鉄平は一瞬だけ田辺をギロリと睨んだ。
「お!?」
田辺のゴリラのような面がニッコリと笑ったので、鉄平は面倒くさそうに脇を通り抜けた。
鉄平の妻が亡くなってから、なんとか元気を出させようと田辺なりに鉄平を構ってきた。
『おはよう』の代わりに頭を叩くのも、その内の一つだった。
叩いた事に鉄平がキレて殴りかかってきてもいい。
何か反応が欲しかった。
それほど無気力で、死んだような目をしていて、田辺は気掛かりで仕方なかったのだ。
「へへ、ちっとは元気になったか?」
田辺に肩を組まれたまま、鉄平は嫌そうに固いソファーに座る。