この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
父子の夜
第9章 求め合う二人
病床の妻が、
『雄平のために…』と、何度もレシピを伝授しようとしたが、鉄平は聞かなかった。
『母ちゃんが作ってやれよ』
と、一貫して突っぱねた。
だから味付けは自分の味覚が頼りなのだ。
「まずは…」と、一口サイズにカットされた鶏肉が入ったトレーに直接、醤油、チューブ入りのニンニクと生姜を入れてぐちゃぐちゃにかき混ぜた。
「…………」
「なんだよ?雄平。間違ってるなら早く言えよ?まだやり直せるんだからさ」
よく晩メシの用意を手伝っていた雄平に尋ねてみるが、雄平は何も言わず首を横に振るだけ。
鉄平はひとつ息を吐き、「どうにでもなれ」と投げ遣りな言葉を発し、漬け置きするためにまたビニールを被せる。
その合間を縫って飯を炊こうかと思った鉄平だが、あまりの暑さに扇風機の前へと避難した。
「あっつ~…」
エアコンのない部屋の中は非常に蒸し暑い。
鉄平はジーンズとタンクトップを脱いでパンツ一丁になる。本当は全裸になりたい。
実際、去年の夏までは家族の前で全裸になっていた。
でも今は、雄平が怖がるだろうと黒のボクサーブリーフだけは身に付けたままだ。
意識すると急激に性欲が漲ってくる。
鉄平は雄平を目で探す。