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父子の夜
第10章 立ち入り禁止
しかし……、
グルルルル~……
鉄平の腹の虫が鳴く。
キュルル……
つられるように雄平の腹の虫も鳴いた。
「………まず、メシだな」
「うんっ!」
ひとしきり顔を見合わせて笑った。久しぶりに腹の底から笑った。
「んじゃあ、雄平!メシの用意手伝え!」
「うんっ!!」
鉄平と雄平が立ち上がりかけたその時だった。
ビ――――――ッ!!
けたたましい呼び鈴の音が鳴り響き二人はまたキッチンの床に座り込んだ。
借金持ちの鉄平は取り立て屋かもしれないと、固く結んだ口に人差し指を立てて雄平を見る。
雄平は静かに頷いた。
「お~い鉄平!!雄平く~ん!!」
田辺の声だった。
鉄平は玄関のドアをじっと見つめる。
「鉄平!いないのか~!雄平く~ん!」
雄平の目の前には、ドアを見つめる鉄平の後ろ姿がある。
その鉄平の背中が、髪の毛が……、小刻みに震えているのが見て取れた。
恐れではない。怒りでだ。