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父子の夜
第3章 長い1日
早朝、鉄平は台所で目玉焼きを作っていた。火力が強すぎて、端っこは焦げて黄身は固くなり、雄平の大好きな半熟にならなかった。職業は土方。手先は器用なようで不器用だ。
「くっそ……!」
妻のように上手く作れず、思わずフライパンごと投げつけそうになった。しかし、借金も多く抱えていて贅沢はできない。
ため息を吐きながら皿に乗せ、食卓へと運ぶ。
「雄平、メシだぞ。起きろ」
チラリと雄平を視界に入れた鉄平は、すぐさま雄平の元へと向かった。
雄平のアナルを犯した後、裂けた患部に軟膏を塗布するため俯せに寝かせた。そして鉄平が目覚めた時も、今も、全く同じ体勢のまま動いておらず、心配になって枕に突っ伏した雄平の顔を覗き込んだ。
雄平の瞳は開いていた。
「メシだぞ……。後で食うか?」
その問いかけに、雄平は小さく頷き、鉄平もホッとした表情を見せた。
朝食を食べ終えた鉄平は無言のまま仕事へと出掛けた。
『んじゃあ、いってきます!』
雄平の耳に幻聴が聞こえる。
「とぉちゃ………いってらっしゃい……」
雄平の記憶の中の鉄平は明るくていつも元気だった。
鉄平は変わってしまった。