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父子の夜
第10章 立ち入り禁止
 
「何怒ってんだよ、鉄平?」
「何しに来たんすか?」

あの時、何か勘繰ったに違いない…。シャワー室で余計な事を聞かなければよかった。
しかし後悔先に立たずで、今更どうしようもない。

「何しにって……久しぶりに遊びに来たんだよ。一緒に飲もうと思ってさ…」

田辺は持っていた酒の入った袋を掲げて見せたが、鉄平はそれを見もしない。

あの時、
個室から出る時、カーテンを開いて数秒田辺を見据えた。言葉にこそ出さなかったが、
『首を突っ込んでくるな』と威嚇し、田辺もそれに気づいて了承したものと鉄平は理解していた。しかし……、

違ったのか。

「元子が死んで間もないんで。酒は飲みません」

「そうか…」と腕を下げる田辺も鉄平から目を離さない。

「久しぶりだから、雄平くんに会いたいなぁ…」

『雄平』を出してきた事で宣戦布告と見なした鉄平は拳を固く握りしめる。

「会ってどうする?」

「どうするって……。鉄平、あのな、俺は――…」

「やっと見つけた俺の生き甲斐なんだ…!邪魔しないでくれよ!」

口調を荒らげる鉄平に気圧されながらも、田辺は視線を逸らさない。


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