この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
父子の夜
第10章 立ち入り禁止
鉄平はかける言葉が見つからずに黙ってしまう。
雄平に対してもそうだったが、頭の中が自分の事だけで周りが全く見えていないのだ。
「……それだけだ」
「……そっすか」
まだ気が立っていて『おめでとう』の一言も言えない。
田辺は買ってきた酒をじっと眺めた後、
「じゃあ、また明日」
と、去っていく。
鉄平は追いかけて田辺の腕を掴んだ。
「元子にも報告して、酒…飲みましょう」
照れくさそうな鉄平に田辺はニカッと笑って応えた。
晩メシのおかずだったはずの鶏の唐揚げは酒の肴となりテーブルに置かれた。
雄平は田辺にギュウッと抱き締められ、もみくちゃにされている。
鉄平は久々に酒を飲み酔っぱらって眠りについた。
熟睡したのはいつ以来だろう?
何も考えずに眠ったのはいつ以来だっただろう…。