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父子の夜
第11章 繋がる赤い糸
8月最後の週末。雄平は珍しく真剣な表情でテーブルに向かっていた。
夏休みの宿題がたんまりと残っていたからだ。
「終わるかなぁ……」
あと3日。微かに涙を溜めた目を必死に動かせ問題を解いていく。しかし、焦っていてなかなか捗らない。
性格的にはのんびりした母に似ている雄平。何をやるにもギリギリになってしまう。
なんとか半分近くをやっつけた雄平はハッと顔を上げる。
窓の外の夕焼けの空。
もうすぐ鉄平が帰ってくる。
雄平はテーブルの上に広げた宿題を全部纏めて玄関先へと運び、床に寝そべって宿題に取りかかった。
(父ちゃん……遅いな……)
鉄平の事を考え始めると、急に手が止まる。ちょうど集中力も切れる頃でもある。
帰宅が遅い鉄平を思い心配そうな顔をしたり、鉄平の笑顔や鉄平の股間にぶら下がるモノを想像して頬を真っ赤に染めたり……。
百面相のようにコロコロ表情を変え、ひとりで遊んでいた雄平だったが、窓から見える空が暗くなった頃、そわそわしだして泣き出してしまった。
「とぉちゃ……とぉちゃ……」
小さな声で鉄平を呼びながら、くしゃくしゃに顔を歪めていた。